
前川建築のタイルは、外壁と構造体が一体の『打ち込みタイル』を代表に、前川建築の空間を司る重要な要素の一つとされています。
前川は、『建築というようなものを考えるとマテリアル(素材)を考慮に入れないわけにはいかないだろう。その時にたとえば壁の材料というようなものは、壺の形の意味と似たようなことを考えざるを得ない。壺のもっている大切な(酒)中身を守ってやるという…形自体の呼びかけがあると思うんだ』と述べているように、焼き物に対しての造詣が深く、我が国の高温多湿、寒暖差の激しい気候風土を踏まえ、タイルの可能性を追求してきました。
その結果今や、日本の近代建築を語るうえで、重要な要素となり、海外からも多くの方が、全国各地にある前川建築を訪れています。
それらの思いを受け継ぐ改修に携わり、窯やその焼成燃料、粘土さえも変わってしまった昨今、タイル製作に携わった織部製陶さんには産地を推察して他県の陶土を使用し、シャトルキルンを用いて温度の微調整を繰り返したり、シャモットの粒度を上げて素材の持つ質感、粗雑さを生かしたりと、試行錯誤を繰り返しながら製作に挑み、その建物の置かれている風土や空間、設計意図に合ったタイルを製作してもらっています。
