織部製陶株式会社

三菱一号館 復元プロジェクト(丸の内ブリックスクエア)

元設計:ジョサイア・コンドル(1894年~1968年解体)
復元設計:三菱地所設計  復元施工:竹中工務店

2004年“三菱一号館” 復元の構想が、かつての同館が存在した街区の建て替え計画に伴いにわかに現実味を帯びてきました。
1894年に竣工した国内初の本格的オフィースビルとして、かつては“一丁倫敦”と呼ばれた、丸の内オフィース街の原点でもあるこの建物を復元することは、近代都市“東京”の建築史を現代へ繋ぐ文化的意義があり、史実に基づいた可能な限り忠実な復元再生が大命題として求められました。

主要構造材として、または本建築の顔でもある煉瓦壁には、設計段階より可能な限り忠実な復元、再生が求められ、明治期の煉瓦そのものの製造法からディテールの再現までが課題となりました。
保管されていたオリジナルの煉瓦を元に、設計図書や幾多の文献、写真解析から
サイズの異なる化粧煉瓦と構造煉瓦の作り分けを行い、化粧煉瓦のみに見られる網目状の積み足の再現や補強用の帯鉄による配筋、2分5厘が基本と成っている目地幅、面を削ぎ落とした化粧煉瓦による開口ディテールなど、完成後も見えない細部にいたるまでの復元項目が徹底課題とされました。


煉瓦復元にあたっては、残存する元煉瓦の検証を充分に踏まえ、当時の生産方法の調査、時代検証を行った上、製造法の推考をまとめました。成型は1本1本煉瓦型の木枠に粘土を押し込める型枠加圧成型法が取られていたこと、焼成についても石炭を燃料としたホフマン窯による焼成が当時の小菅集治監を主要工場として生産されたとの結論に至りました。徹底した明治煉瓦の再生を考えたとき、国内に現存するホフマン窯で実際に稼働している窯は既に無く、現在の国産煉瓦の主流製造方法である、湿式押し出し成型とガス・重油を主燃料としたトンネルキルン(窯)では、焼成温度が高過ぎることや煉瓦表面の粒度の繊細さが表現できず、当時の煉瓦が持つ独特な柔らかな肌合いがうまく表現できませんでした。

そこで製造工場の選定には、石炭を主燃料に用いて輻射熱式の焼成方法がとれ、炉内の最高温度が1100℃前後と比較的低めの温度帯で焼成できる条件が上げられました。
加えて木枠による型枠加圧成型を生産体制として組み込めることができ、コスト面や生産量的な対応と共にそれらを享受出来る工場体力が条件となり、結果、中国は長興市にある煉瓦工場が探しだされました。


煉瓦の色合いや質感の確認作業を兼ねた試作が始まり、特に化粧煉瓦の再現に当たっては日本大学生産工学部の協力を頂き、網目状の積み足を持つ原寸大モデルを製作。中国現地の工場に製作指示をする過程を踏みました。
製造に当り後々大きな問題と為ったのは、元来中国で使用される煉瓦用途の多くは構造部材であるため煉瓦に対する基本的な考え方、煉瓦文化には大きな隔たりがありました。
製造に当る中国人スタッフには、小さな割れや欠け、寸法精度、吸水率、圧縮強度などなど…日本側が求める品質への理解が進まず、“そもそも何故その様な高い品質が煉瓦に必要なのか?”と言う合理的理解が得られない状況が根底に流れていました。
受け入れる日本側についても同じく、当初は中国側の基本的な煉瓦に対する考え方の違いが理解できず、溝は深まるばかり…後々まで戸惑う連続でもありました。



日本大学理工学部・安達・中西研究室による加力試験の実施、積み重ねられた基礎データーを元に、
大正12年以降、皆無であった本格的煉瓦造建築がこうして復元施工されました。
現代テクノロジーの粋を集めた免震地盤の上に建てられた煉瓦の総本数は約230万本。
動員された煉瓦工延べ16240人工。使用された積みモルタルは7万袋に及ぶ一大煉瓦工事が行われました。
元設計に従い、J・コンドルが考案したと思われる当時の耐震補強工法も同時に再現されました。
水平方向に碇聯鉄を配した耐震補強がとられ、その帯鉄を煉瓦と煉瓦の水平目地部に挟み込み、各階の繋ぎ部分の層に建築四周を取り巻くように配されています。


115年前の建築を復元するに当たり、設計や監理、施工の方々の前には、115年の時間に相応しい膨大に積み上げられた課題や問題が山積していた事と思います。
それらを一つ一つ紐解き、様々な業種の方々とのディスカッション。試行錯誤、挑戦、類推と実証の連続であったろう…と、その御苦労に際しては、深い感慨の念を抱かずにはいられません。
現在の建築が忘れ捨ててきた技術や知恵。廃れてしまった伝承の復元でもあった今回のプロジェクトは、明治煉瓦同様に大変多くの方々の汗と情熱の上に成り立ち、まさに積み上げられた粗積建築だと思わずにはいられません。


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